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淡くて優しい桜色と雷光さん

アニメ設定
ヒロインは連載の子モチーフ




あの頃の僕らはとうに気づいていた。
気づいていたけれど言葉にはしなかった。
お互いがお互いに秘めたる思いを燻らせていることくらい、火を見るより明らかだった。
ただいつも二人でいるだけで精一杯で、肩がささやかに触れるだけでも怯えたように体を震わせていたほどだった。


僕らの住むのは町外れ、学校から家までには桜並木がもつれあうように咲き誇る。
その下を僕らはただ静かに会話なく歩く。
二人きりその淡い桃の光の中で、言われ得ぬ切ない思いを抱いていたのは確かだった。


春が過ぎ夏も冷え秋を追い越し冬を溶かしても。
僕ら二人、ずっとこのままなんて絶対ありはしないことなど。
淡く淡く膨らみ色づく蕾のような思いを掻き抱いても、それは届くことのない子供の戯れ言だと僕らは気づいていた。

さよなら僕らの甘く優しい日々よ。
住む世界は違うなれど、大人になった私はまだ君を忘れてはおらぬ。
証拠に私の髪は、あの頃の桜の光のように淡く桃色に染まっておるのだから。







私は目の前の女性をまじまじと見つめる。年の頃は私と一緒というところだろうか、淡い栗色のお髪が、病院の無機質なブルーライトにゆらめいて、違う、そうじゃない。
なぜだろう、なぜ彼女を見つめると胸がこんなにも面映ゆいのだ。

「これ、使ってください」

ふと見上げてきたその二つの眼差しは、まるでかつてのようにきれいな弧を描いて、伸びた真白でたおやかな指先はまだ暖かい、ブランケットを私の肩にそっと掛けた。
「こんな冷える日にそんな格好じゃ風邪引いちゃいますよ」

ありがとうと呆けて言う私に、またにこりと微笑むと彼女は、返すのはいつでも結構ですと一言捨て置いて、甘い香りのする(例えば桜のような)髪を煌めかせきびすを返す。
さよならおやすみなさい、彼女の言葉はなぜだか寂しくて、なにかを期待するかのような目線を私に残して。

私の脳裏に、あの日の桜を蘇らせて。


ふと気づけば私の手は彼女の腕を強引につかんで、言葉さえもなく彼女を引き留めていた。突然腕を鷲掴みにされた彼女は瞠目した後に、また柔らかく笑ったのだ。
まるで。ずっと待っていたと言わんばかりに。
細い指先がまた、そして今度は幼き頃よりも怯えることなく私に触れる。
ああよく覚えている。今ではずいぶん幻のような記憶だけれど。
しかし私はあの幼き日々に憧れた、秘め事隠したその思いを忘れることも手放すこともないだろう。

そして言えずにしまっていたあの、言の葉もすべて、いつか告げることを君に誓う。









モチーフ 秒速5センチメートル
イメージソング 忘れられた桜の木(より子)

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