「紙漉きってどうやるんですか」
「簀をね、こうタッパンて、」
「こう?」
「そうそう、パルプを薄く伸ばして少しずつ重ねていくんだ」
「地道ですね」
「でもすてき、だろう」
「ええ、すてき」
「君はなにをやっているのだったかな」
「私は染め織りどちらも。あとは焼き物。」
「楽しいかい?」
「はい、とっても。雷光さんは?」
「私も楽しいよ」
「ほんとう?」
「ほんとうさ、疑っているかい」
「いいえ。やっぱり職人さんだなぁって」
「そんな大それたものではないさ」
「そんなことないわ、雷光さんは立派な職人さん。だって、手のひらがちゃんとものづくりの人の手だもの」
「ものづくり、かい」
「ええ、とってもきれいな手のひら」
「…」
「ものを作り出す、きれいな手のひらです」
「…そうかな」
「そうよ」
「そうか」
「はい。私、雷光さんの手のひらだいすき。」