時代が笑う。常識と理性と、境界が私たちを切り離す。
世界が分離する。私たちがからめあっている指先の結び目をほどく。
それでも私たちきっとまた会えるって、幼い私はなんの理由付けもなくそう思った。
無邪気なものね。
指先がじわりと暖められて、まるで火のついたマッチ棒みたい。あつい、あついわ。
どこもかしこもあつい。体が震えている。人の体温奪ってもまだ寒いのかしら、まさか。
会えないって知っていた。
知っていたけどきっといつか。
彼は目の前にいる?
あのとき私が愛した彼はこのひとかしら。
髪色なんてずいぶん変わってるけれど。
私は今でも覚えてる。幼かった貴方の優しい嘘とわらいかた。
戻ってくるなんていって笑ったあなた。
今ここにいるのはなにより喜ぶべきことなのに。
なんで私の目は潤い溢れていくのかしら。
この人はかつての彼なのかしら。
私を傷つけまいと世界を分けた彼なのかしら。
彼はいつだって穏やかで急くことはなかった。
今みたいに、私の体を獣のようなその力で私を蹂躙するような人じゃなかった。
焦って私を傷つけるような人じゃなかった。
顔を見る。
ああ彼はこんな顔だった?
ねえ私の記憶がおかしいかしら。
こんな辛い顔して女をらんぼうに抱いたりするの?
泣いたりするの ね。
「らいこうさん」
「なん、だい」
「ねぇ」
寂しいならその飾りじゃない口で言って頂戴。
(そしたら私境界もなにもこえて貴方を一人になんてしない)