母の背中を覚えてる
私は彼女の後ろ姿をじっ、と見つめていた。特に深い意味なぞない。
彼女は生業にしている陶芸に没頭している最中であった。だから話しかけない。まず話しかけても返事は望めない。
まだまだ見つめる。じいっ、と。
彼女の背中は細いのだけどどこかたくましかった。
土を叩き打ち付ける音が聞こえる。
彼女の土は手作りである。蕃天の土はよい土だそうだ、笑顔で私に言ったのを覚えている。
粗方作業を終えて、素焼き前の作品を釜入れしている。ああそういえば今日は徹夜だと言っていたっけ。あとでなにか持ってきてあげよう。
改めて彼女を見る。
彼女は力強く、逞しく、繊細に作品を作っていた。
それは彼女自身の後ろ姿に似ていて、そしてなぜだか儚い人となった母に似ていて、私は。
(信念を曲げない、私を愛してくださったあなたたちです)